歌舞伎には長く複雑な歴史がありますが、だからといって敬遠する必要はありません。歌舞伎の演目はその人気や上演される頻度が時と共に変動するので、単純に順番を付ける事はできませんが、観る事ができる可能性が高い順に、特に重要な演目を5作品挙げてみました。

東海道四谷怪談

民谷伊右衛門は妻のお岩と別れる理由を探しています。その間にも別の女性、お梅は伊右衛門にすっかり惚れ込んでいます。お梅はお岩の美貌には勝てないと考え、お岩に化粧用クリームに扮した毒を送ります。それを使った途端にお岩の顔は恐ろしく崩れ、鏡の前で髪を梳かせば抜け落ちてしまうという劇的な展開となります。

伊右衛門はうんざりし、離婚できるように遊郭の主人を雇って妻を強姦させようとします。ですがお岩は不注意で言い合いの際に自らを死に追いやってしまい、息を引き取る間際に伊右衛門に呪いの言葉を掛けるのでした。その後すぐに伊右衛門はお梅と結婚しますが、怒り狂う幽霊となったお岩は彼を操って娶ったばかりの妻を殺させます。お岩の呪いは強烈さを増していき、最終的には伊右衛門を狂わせるのでした。

菅原伝授手習鑑

これは五段構成の戯曲で、とある一段が有名な作品です。また、代表的な歌舞伎演目三作品の内の一つです。四段目の第三場目は「寺子屋」(お寺の学校)として知られており、戯曲の中でもこれまでに最も上演されてきた部分です。

菅丞相は天皇の打倒を企んでいると虚偽の告発を受けて、九州に流刑された大臣です。彼を告発した藤原時平(実際に天皇の座を狙っている者)はその目的を果たすべく、九州まで菅丞相を追いかけます。

ですが藤原時平の家来である松王丸は、父と同じく菅丞相を贔屓する兄弟達とは仲違いしてしまいます。最終的に菅丞相の子供を見つけて寺小屋で殺すように命じられた時、松王丸は自らの子供を身代わりにたてます。逃れられない状況と慈悲の心のせめぎ合いを象徴する場面です。

弁天小僧

伝統的な五段構成からなり、とてつもない人気を誇る歌舞伎演目の弁天小僧ですが、盗人である主人公から名づけられています。正式な演目名は青砥稿花紅彩画ですが、白浪五人男としても知られています。

演目は弁天小僧が若いお姫様を騙して婚約者だと信じ込ませる所から始まります。他四人の罪人を巻き込んだ一連の詐欺を働いたのち、五人は最終的に演目の大詰めで集合します。

実は盗人の内二人は密告者でした。弁天小僧が公演中に実際立っている屋根を使う非常に複雑で高度な舞台技術を要する背景から、全てを正す為に弁天小僧が自ら命を絶つシーンは歌舞伎の中でも最も有名な場面です。